退職前と後、転職先探しはどちらがベスト?
「辞めたい」と思ったら、すぐにでも転職先を探したくなりませんか?でも実際はどうでしょうか。日々の業務に追われ、疲れた体で履歴書を仕上げて面接にいくことは決して簡単ではありません。片や、仕事をやめてから探しても大丈夫だよという人もいますが、それは本当でしょうか?
実際の体験談をベースに、転職活動の現実をまとめましたので参考にしてください。
働きながらの転職活動は実際どうなのか
忙しい毎日の中で、転職先を探すのは退職後がいいという人がいます。確かに働きながら転職先を探して面接を受け、内定をもらうのは難しいと感じられるかもしれません。
「ゆっくりと仕事を探した方が、良い職場が見つかるのではないか」と感じる方もいらっしゃいます。
転職先を探し始めるのは退職前が最適
退職後になれば当然時間があるため、転職先を探すのも面接に行くのも簡単です。じっくりと転職先について調べられるのは、確かに良い点と言えるでしょう。しかし、転職活動は働いている期間に行うのがベストなのです。
退職後に転職活動を始め、すぐに転職先が見つかって、内定が出るというケースもあります。
しかし現実的には、こうしたケースは非常に稀であり、中には転職活動を半年以上行っても結果が出ないこともあります。
先に退職してから転職活動を始めて、転職先が半年も決まらないと、面接では現場から離れたブランクのある人という印象を持たれてしまうデメリットがあるのです。すると結果として内定を得るのがさらに難しくなります。
加えてブランクの期間は収入がないため、経済的なストレスも加わり、転職活動がさらに上手くいかなくなる場合もあるでしょう。そういったリスクを避けたいのであれば転職活動は可能な限り、現職中に始めるようにしてください。
転職活動は期間限定で
転職について本気で考えるようになったら、早めに行動を起こす方が良いでしょう。もし本気で転職を考えているなら、転職のために使う期間を決めるようにしましょう。転職に使う期間は、長ければ良いということはありません。
転職先のリサーチを始めてから半年以内に転職を終わらせるという目標を持つことです。
実際に他の会社とコンタクトを取るようになったなら、3ヶ月以内に内定をもらえるように目標を立てます。この3ヶ月という時間は非常に重要であり、多くの転職エージェントでも3ヶ月という時間のみ転職サポートを行っています。つまり3ヶ月を超えて転職活動をしたとしても、なかなか結果に結びつかない可能性があるという意味です。
転職期間が長くなると、現職にも身が入らなくなる危険性があり、仕事に身が入っていないことを上司や同僚に注意される方も少なくありません。
仮にリサーチを始めて半年を過ぎても転職先が決まらないなら、一旦転職活動を停止して現職で新たな資格を身に付けたり、スキルを伸ばす方に力を入れ、次の転職チャンスを待つ方が良いと言われています。
動機がはっきりしないなら転職はしない方がベスト
なんとなく転職したいという気持ちのまま、転職活動に入ってしまうとあらゆる面で悪影響になる可能性があります。現職の仕事に対しても身が入らなくなり、さらに転職先の面接での熱意が欠けているため、面接官は良い印象を抱く可能性が低くなる傾向があります。
実際のところ、20社以上にエントリーをして、4社ほどの会社と面接を行ない、2社くらいから内定が出されるのが平均的です。現職中にこれほどの転職活動を行うのには、体力も気力も熱意も必要になってきます。なんとなく転職を希望しているだけでは、ちょっとしたことで挫折を感じるようになるのです。
転職を実行に移す前に、転職を望んでいる動機をはっきりさせるようにして、漠然とした転職活動をしないようにするのが極意です。
一番良い方法は、現職に就いている自分が1年後にどうなっているのかを具体的に考えてみることです。今の会社でモチベーションを維持できず、苦しんでいる姿を想像しますか?あるいは「1年後の自分が、今の職場で順調にキャリアを積むことができているだろうか?」
こうした自問をすることで、転職に対する自分の正直な気持ちを確かめることができるでしょう。
転職をする動機や目的がはっきりして、自分には次のステップが必要だと強く感じたのであれば転職活動を始めるタイミングです。
仲間の言葉でなんとなく転職活動を始めてしまったKさん
Kさんは、ITエンジニアの仕事を6年程行っており、現在の会社にもそれほど不満があるわけではなく、給料も良く大きなプロジェクトも任されていました。
そんな時、サークル仲間と再会して仕事の話になり、ほとんどのサークル仲間が転職をしていることを知ります。
30代になる前に、一度は転職をした方が良いという仲間の言葉に影響を受け、Kさんは転職活動を始めることにしました。
KさんのITエンジニアという職業柄、多くのオファーがあり、Kさんは多くの会社の面接を受けることになりました。
しかしKさんには転職の明確な目的や動機がないため、面接で聞かれる「なぜ転職を考えたのか」という質問にスムーズに答えることができず、内定をもらうことができません。
内定が出ないことに意気消沈したKさんは、現職の仕事にも影響が出てしまい、上司から身を入れて仕事をするようにと注意されるようにもなります。
徐々に職場に居づらくなってしまったKさんは、最後に内定を出してくれたO社への入社を決め、転職活動を終えました。
しかし実際にO社に入社してみると、仕事の内容は前職よりも規模が格段に小さくなり、給料も減少してしまいました。結果的に前職を上回るような仕事を転職ができなかったのです。
O社での仕事に魅力を感じることができず、現在KさんはO社からの転職を考えています。
このように転職活動を行う動機や目的が明確になっていないのなら、転職自体を失敗してしまう可能性が高くなってしまうのです。
退職後に転職先を探すのがよい場合もある
在職時に転職先を見つけるのがベストですが、例外もあります。社員の行動を細やかに把握するような会社では、こうした会社の場合は在職時に転職先を探すのは非常に難しいかもしれません。中には外勤時の社員の1日の行動を把握するため、訪問先の得意先に電話をして何時くらいに社員が訪問したのか確認する会社もあるといいます。
また営業車の走行距離を記録させ、取引先以外の訪問を行なっていないのか、毎日確認するような会社もあるのです。
こうした会社は、社内の人間の行動をチェックする部署があり、発見することでその部署の手柄になるシステムがあるため、こうした状況下で面接先を訪問する計画を立てるのは至難の業となります。見つかると減給や降格などの処分が下される可能性が非常に高く、転職先を探すこと自体に大きなリスクが伴うことになります。
もし、現職の環境がこのような厳格な管理であれば、転職先を探すのは退職してからの方が賢明です。
ですがこうした特別なケースを除いては、やはり転職活動は現職中に始めるのが得策です。
しかし転職活動に、明確な動機や目的が伴っていないなら、転職活動を始めたとしても成功できる確率は高くないでしょう。
転職を成功させるためには、転職のタイミングを誤らないこと、転職の動機と目的を自分の中で明確にさせることです。一人では不安だという方は、個別対応で企業を紹介してくれる転職エージェントに登録するのもおすすめします。
2.転職活動を成功させる-家族への相談は必須
「仕事のことは全て自分が決めるので、転職についても家族には内定が出てから伝える」
転職サポートのプロに聞くと、このような意見を持っている男性が意外と多いようです。確かに、こうした意見の背景にある気持ちは、家族に心配をかけたくない、家族に影響はほとんどないので知らせる必要はない、という家族を思う気持ちかもしれません。
しかし転職は、自分が考えている以上に家族に対する影響があるものです。
転職が家族に与える影響
転職をした後には、状況予測がつきにくくなります。転勤の可能性を事前に確認しても実際はわかりません。万が一、そうなった場合に配偶者も仕事をしているのであれば、配偶者も退職することになり、もし子どもがいれば転校の可能性もでてきます。
住宅ローンがあれば、収入が変わることで返済額への影響もあるかもしれません。会社から住宅ローンを借りていたのであれば、会社への一括返済を行うために改めて住宅ローンを組み直す必要もでてくるかもしれません。
もし住宅をまだ購入していないなら、なおさら転職後はしばらくの間、住宅ローンを組むのが難しくなるでしょう。転職をすると信用情報が変わるため、一定期間クレジットカードを作るのも難しくなる場合もあります。
転職をすることは、家族に大きな影響を与えることであり、場合によっては家族の一生を左右することになります。転職活動を始める前には「転職は自分が決めれば良い」と考えるのではなく、家族への影響が大きいことを理解しておきましょう。
家族に相談してから転職をしたNさんの例
転職をするときには、家族の意見を聞いておくことは重要なことです。特に家族の中でも配偶者に相談することを怠ると家族の間に大きなヒビが入ることもあります。
きちんと家族に相談して転職を成功させたNさんの例を見てみましょう。
Nさんの仕事は大手のIT部門で働くITエンジニアで、結婚当初から奥さんにいずれは独立して企業したいという希望を伝えていました。Nさんの仕事は非常に安定しており、誰もが羨むような職場環境で、同僚の中にも転職する人はほとんどいません。
しかしNさんはキャリアアップのため、さらに大きなプロジェクトを自分自身で扱えるような職場への転職をすることが、自分の将来の夢を叶えることに繋がると思い、転職を考えるようになります。
Nさんが最初に行ったのは、奥さんに相談することです。奥さんはもともとNさんの希望を知っていたので、Nさんの決定を喜んで支持してくれました。Nさんは奥さんのサポートの元、転職活動をスタートし、ほどなくして現在の会社より小さいものの、堅実な経営を行うW社から内定が出ました。
W社でNさんが行う仕事は、まさにNさんが長年望んでいたキャリアアップができる仕事であり、将来の独立の足がかりになります。自分自身で、クライアントと直接交渉し、クライアントの望んでいるものを作り上げる環境がW社にはありました。
しかしNさんがまさに望んでいた会社であったにも関わらず、Nさんは今の安定した仕事を捨ててまで転職をすべきなのだろうかと不安を感じ始めるようになりました。
同僚の多くも、Nさんに対して「なぜ安定した仕事環境を捨ててまで、新しい事を始める必要があるのか」と話しました。そんな時、Nさんの奥さんは「私の仕事をしているのだし、経済的には大丈夫だから、今は自分の夢に向かって進んでいいよ」という声をかけてもらいました。
Nさんは、奥さんからの励ましによって転職する決断ができ、W社でキャリアを積んだ後退職し、現在は念願の独立開業を実現させたのです。
事前に転職を家族に相談しなかったTさんの例
Tさんは、大学を卒業して大手企業に就職し、順調にキャリアを積んでいましたが、会社の経営体質に対して疑問を感じて、転職を考えるようになりました。Tさんは、専業主婦の妻がおり、子どもは就学前、住宅ローンによってマンションを購入済みという状況でした。
Tさんは転職をするなら、引っ越しの必要がなく給料も同じくらいで待遇が今よりも良い会社にしようと転職活動をスタートさせます。
奥さんには余計な心配やストレスをかけたくないという気持ちから、転職に関する情報は伝えず、内定が出てから伝えて驚かせようと考えていました。
転職活動を始めてからしばらくすると、B社というベンチャー企業から内定が出ました。
B社は大手ではないものの、業界では手堅く経営を行っていることで知られており、TさんはB社でこれまで以上の権限が与えられることになります。
職場の変更は必要なく、給料も前職とほとんど変わらず、さらにストックオプションまで準備されていました。
Tさんは条件的に前職の大手企業よりも良いと思い、喜びの報告をしましたが、奥さんの反応はTさんが想像していたものとは大きくかけ離れていました。
「なぜ、こんな重要なことを正式に決まってしまう前に報告してくれなかったのか、知名度の低い会社への転職した後の人生に不安を感じる」と、Tさんの転職に大反対したのです。
Tさんが、引っ越しが必要ないこと、給料は変わらないこと、これまでの生活が一切変化しないことを説明しましたが、奥さんは理解することはありませんでした。
これがきっかけで夫婦間に大きなヒビが入ってしまい、夫婦の仕事や生活への価値観の違いが修復できず、最終的にTさん夫婦は離婚に至りました。
Tさんの転職自体に問題があったというよりは、奥さんに早めに相談していなかったため、応援されるどころか信頼を失い、最悪の結果になってしまったのです。
転職に対する感覚や印象は、各個人によって大きく異なっています。きっと奥さんも同じ気持ちを持ってくれるだろうと、相談をしないで転職を進めてしまうなら、ほぼ間違いなく問題が生じます。本当に転職を成功させたいと考えているなら、家族の中で転職について事前に話し合うようにしましょう。家族からの賛同を得られない転職は、本当の意味で成功することはありません。
3.おわりに
転職活動はやってみないと、どんな結果になるかわかりません。すぐに決まるかもしれませんし、逆のこともあります。どんな時でも職場や家族との関係を気持ちよく保ちながら、進めていくことが大切です。そして、もしなかなか決まらなければ、途中で休憩することも必要なのです。焦ることなく、自分も家族も周りの人も「いいところが見つかった」と喜びあえる転職を目指してくださいね。